【輸出メーカー必見】RoHS指令(ローズ指令)を解説!規制対象と求められる対応とは
EU圏内では、化学製品による人体・環境への悪影響の危険性から、特定の有害物質はRoHS指令(ローズ指令)によって使用が制限されています。日本国内では適用されないものの、輸出産業においては規制への対応が必要です。しかし、法改正により対象が10物質に拡大され、どこまで適用すべきか頭を抱えている企業の方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、RoHS指令とは何かについて詳しく解説いたします。RoHS指令の適用時に求められる対応もお伝えいたしますので、EUへの輸出製品を製造するメーカーの方はぜひご一読ください。
RoHS指令(ローズ指令)とは
まず、RoHS指令について、次の4点から理解を深めていきましょう。
- RoHS指令の目的
- 改正RoHS指令(RoHS2)の内容
- RoHS指令とWEEE指令の違い
- RoHS指令とREACH規則の違い
RoHS指令の目的
「RoHS指令(ローズ指令)」とは、EUで定められた電気・電子機器の廃棄処理で特定有害物質を発生させる製品の使用を規制する法律です。英語での正式名称は「Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment」といいます。RoHS指令の目的は、主に次の2つです。
- 廃棄物処理の際に発生する有害物質から人体・環境を保護する
- 電気・電子機器をリサイクルしやすくする
ただし、RoHS指令は日本に適用される法律ではなく、国内での製造・販売においては各種環境および労働関連法に準じていれば問題ありません。
改正RoHS指令(RoHS2)の内容
法改正により、2019年7月22日から規制物質が追加され、制限・禁止の対象が6物質から10物質へ拡大されています。新たな指令は「RoHS2」と呼ばれ、施行後に旧指令は廃止されました。RoHS2では、以下が義務付けられています。
- RoHSへの適合性の評価
- RoHS対応製品へのCEマーキングの貼付
- RoHS適合宣言書および証明書の作成と保管
適合宣言書や証明書には、メーカーと登録商標および識別情報を記載し該当製品へ添付するほか、製造元において10年間保存しなければなりません。
RoHS指令とWEEE指令の違い
「WEEE指令(ウィー指令)」とは、リサイクルにおける電気・電子機器の取り扱いを定める法律です。正式には英語で「Waste from Electrical and Electronic Equipment」といいます。RoHS指令が有害物質の使用を規制しているのに対し、WEEE指令では電気・電子機器の廃棄をリサイクルによって減らすことが目的です。
RoHS指令とREACH規則の違い
「REACH規則(リーチ規制)」とは、製品に含まれる化学物質のリスクを評価し、ECHA(欧州化学品庁)への登録を義務付けるルールを指します。英語による正式名称は「Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals」です。有害物質による被害を抑えることを目的としている点はRoHS指令と同じですが、REACH規制は含有自体を規制する内容ではありません。
RoHS指令(ローズ指令)の対象
RoHS指令の適用範囲について、以下3つに分けてお伝えいたします。
- RoHS対象の10物質
- RoHS指令の対象製品
- RoHS指令の適用除外となる物質
RoHS対象の10物質
最新のRoSH2指令では、電気・電子機器における下記10物質の使用が制限されています。
- カドミウム(Cd)
- 鉛(Pb)
- 水銀(Hg)
- 六価クロム(Cr+6)
- ポリ臭化ビフェニル(PBB)
- ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)
- フタル酸ジエチルへキシル(DEHP)
- フタル酸ジプチル(DBP)
- フタル酸ブチルベンジル(BBP)
- フタル酸ジイソプチル(DIBP)
上記の10物質には、最大許容濃度が設定されています。最大許容濃度は、カドミウムが0.01wt%、それ以外の物質は0.1wt%です。規定外の製品は、EU圏内で製造・販売できません。
RoHS指令の対象製品
RoHS2指令の対象となる電気・電子製品は、以下のとおりです。
- 大型・小型家庭用電化製品
- 情報・通信デバイス
- 民生機器(テレビ・ラジオなど)
- 照明
- 電動・電気工具
- 玩具・レジャー・スポーツ機器
- 医療用機器
- 監視・制御機器
- 自動販売機
上記に加え、RoHS2が発行した2019年からはAC1000V、DC1500V以下の定格電圧を持つすべての電気・電子機器が対象となっています。
RoHS指令の適用除外となる物質
RoHS2指令の附属書ⅢおよびⅣにより、以下の物質はルールの適用が除外されています。
- 真鍮内の鉛(4wt%以下)
- はんだに含まれる鉛
- 蛍光灯の水銀
- 鋼材(鋼鉄)内の鉛(0.35wt%以内)
- アルミ内の鉛(0.4wt%以内)
- 銅合金(真ちゅう)内の鉛(4wt%(40,000ppm)以内)
ただし、上記が適用除外となるのは技術的・科学的に代替が不可な用途のみです。さらに、除外期間にはそれぞれ期限があり、永久的ではありません。
EUに輸出する日本企業にはRoHS対応がどこまで求められる?
前述のとおり、日本ではRoHS指令を適用していないため、本来であれば必ずしも対応を要しません。しかし、EU向けの製品・部品を製造・販売するメーカーにおいては、RoHS指令への適合性の評価と宣言を実施し、証明書を作成しなければなりません。また、製品・部品がRoHS対象の物質を含まないかどうかの検査は、物質や含有量によって分析方法を変える必要があります。RoHSへの対応プロセスが煩雑になるため、第三者機関での検査がおすすめです。
なお、RoHS指令に準じていない製品の輸出が発覚した場合、「RAPEX(EU緊急警告システム)」により通知され、リコールの対象になります。違反の際は罰金が課せられるだけではなく、製品回収にもコストがかかるでしょう。また、企業としての信用低下も免れないため、EU向けの輸出製品を取り扱うメーカーは慎重に対応する必要があります。
RoHS指令(ローズ指令)にも対応するインキを選ぼう!
RoHS指令の適用は、今や世界基準となりつつあります。日本ではまだ適用が義務付けられていませんが、輸出産業においては対応が不可欠です。国内でもいずれRoHS指令適用の流れとなる可能性もあるため、早急な対応が求められるでしょう。
シヤチハタでは、マーキング・インキで日本中の産業を支えつつ、環境にも配慮した技術開発を進めています。産業用マーキングにおける主力商品である「TAT(タート)インキ」は、RoHS指令などをはじめとし、国内外の主要な化学物質規制への対応も万全です。あらゆる産業に最適なインキを展開しているのため、コンプライアンスを高めたい企業の方はぜひ導入をご検討ください。