染料と顔料ではどっちのインキがいい?マーキングにおける違いと見分け方
インキには、油性と水性の違いがあることはご存知の方も多いと思います。しかし、インキはさらに着色料で顔料と染料に分かれており、それぞれ適した使用シーンが異なることをご存知でしょうか?
本コラムでは、産業マーキングにおける顔料と染料の違いや見分け方を解説いたします。マーキングする素材別にどちらがいいのかも解説いたしますので、インキの選択にお悩みの際はぜひ参考にしてください。
インキの顔料と染料の違い
産業マーキングには、油性インキを用いられることが一般的です。同じく、油性インキにも顔料・染料の2種類があり、それぞれ異なる性質を持っています。まず、顔料と染料の違いからみていきましょう。
顔料インキの特徴
顔料インキとは、粒子が大きく、水分に溶けない性質を持っている塗料を指します。不透明のため、非浸透面への印字でも発色が明瞭でくっきりと表示できる点が特徴です。耐水性や耐光性にも優れており、さまざまな環境下で鮮明な印字が求められるマーキングに最適だといえます。
染料インキの特徴
染料インキとは、粒子が細かい水溶性の塗料のことです。幅広い素材に対応する汎用性の高さと、乾きの早さが特徴であり、連続なつ印にも使えます。ただ、印字対象が暗色の場合は印字が透けて見づらくなりやすいため、明るい色のインキを使用するほうがいいでしょう。
顔料・染料の見分け方
顔料・染料を見分けるポイントは、以下の5つです。
- 染み込みやすさ
- 乾きやすさ
- にじみやすさ
- 退色しやすさ
- 仕上がり
染み込みやすさ
顔料インキは印字対象に塗料が付着して発色するため、インキが表面にとどまり、内部に染み込みません。一方、染料インキは印字対象の内部に浸透するしくみになっており、印字する素材によっては裏まで染みる可能性があります。
乾きやすさ
油性インキの場合、顔料・染料ともに乾燥時間が早い傾向にあります。ただ、あえていえば染料インキのほうが乾くまでにある程度の時間が必要です。
にじみやすさ
顔料インキは、水濡れに強く、印刷後のにじみや色あせが少ない性質です。染料インキは水溶性のため、比較的にじみやすくなります。
退色しやすさ
顔料インキは耐光性に優れ、長期間にわたり色あせしにくいのが特徴です。染料インキは光に弱いことから、経年劣化による退色・変色が起こりやすいといえます。
仕上がり
顔料・染料の大きな違いは、仕上がりの光沢感に現れます。染料インキは非常に鮮やかに印刷できるため、光沢紙などツヤのある用紙に印刷すると容易に見分がつくでしょう。
産業マーキングにおける顔料と染料の使い分け
ここからは、次の6つのケースに分け、顔料・染料どちらのインキがマーキングに適しているのかを解説いたします。
- 布・革へのマーキング
- 段ボールへのマーキング
- 木材へのマーキング
- プラスチック素材・フィルムへのマーキング
- 工業部品へのマーキング
- 長期的な使用を前提とした製品へのマーキング
布・革へのマーキング
浸透面である布や革への印字には、染料インキが最適です。印字対象へすばやく染み込み、鮮やかにマーキングできます。
段ボールへの印字
段ボール箱などへの印字には、染料インキを選びましょう。染料は紙素材への浸透が早く、乾燥時間も短くなります。
木材へのマーキング
木材には、染料インキを使うときれいに印字できます。素材自体が凸凹しているため、表面に色付けする顔料インクでは、うまく印字できないケースがあります。
プラスチックフィルム・樹脂へのマーキング
プラスチック製のポリ袋やフィルムなど、光沢のある素材にカラフルかつ鮮明に印字できるのは染料インキです。ただし、硬質な樹脂に印字する場合、染料インキだと経年劣化によるにじみが起こる可能性があるため、顔料のほうが適しています。
工業部品へのマーキング
自動車のパーツや電子基板など、非浸透面へのマーキングには顔料インキが推奨されます。また、熱や薬品などにさらされることを考慮すると、染料インキだとにじみが懸念される点も顔料インキをおすすめする理由の一つです。
長期的な使用を前提とした製品へのマーキング
保存性が高いのは、顔料インキです。染料インキは、経年劣化による色あせが危惧されるため、長期保存には適していません。
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インキと一口にいっても、その性質はさまざまであり、対象物によって適した素材が異なります。産業マーキングのインキを選ぶ際は、顔料・染料を用途に応じて使い分けるとよいでしょう。
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