トレーサビリティとは?必要性・メリットや重要なポイントもわかりやすく解説
トレーサビリティは、これまで食品産業や計量・計測器業界をはじめ、製造業で代表的に活用されてきたシステムです。近年は製造業だけではなく、IT化が進む産業でも注目度が高まっていることをご存知ですか?
本コラムでは、2種類あるトレーサビリティについて、具体例を交えながらわかりやすく解説いたします。トレーサビリティシステムの必要性やメリットに加え、うまく機能させるために重要なポイントもご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。
トレーサビリティとは
まず、以下3つの視点から「トレーサビリティ」とはどのようなものなのか迫っていきましょう。
- トレーサビリティの意味
- トレーサビリティ普及のきっかけとなった事例
- トレーサビリティのしくみ
トレーサビリティの意味
トレーサビリティとは、簡単にいうと、製品の製造ルートを明らかにすることを指します。英語の「Trace(追跡)」と「Ability(能力)」を組み合わせて作られた用語です。原材料の産地や生産過程、製造日時・場所などの識別情報を印字し、履歴を追跡できるようにしておくことで、製品の安全性と品質を向上させる効果が見込めます。
トレーサビリティ普及のきっかけとなった事例
トレーサビリティは、2000年はじめに起きた「BSE(狂牛病)問題」によって注目され始めたことから、従来は食品製造業で導入されるケースが一般的でした。しかしITの発展にともない、不正・改ざん防止策として、トレーサビリティの重要性が今後ますます高まると考えられています。
トレーサビリティのしくみ
トレーサビリティは、情報をさかのぼる「トレースバック」と、後の工程を追跡する「トレースフォワード」という2つのしくみから成り立っています。具体例を挙げると、製品の不備がどの製造工程で発生したのかをたどり、原因究明をスムーズにするための機能がトレースバックです。対して、製品の不備が見つかった際、すみやかに回収し被害の拡大を食い止めるためにその流通経路を追跡することがトレースフォワードです。
トレーサビリティの種類
トレーサビリティは、次の2種類に分けられます。
- チェーントレーサビリティ
- 内部トレーサビリティ
具体例も交え、それぞれの違いをみていきましょう。
チェーントレーサビリティ
チェーントレーサビリティとは、材料調達・製造から消費者の手に渡るまでの全工程における物流を追跡可能にすることです。材料の入荷元へさかのぼったり、出荷先を追ったりなど、本来であれば自社の手が届かない範囲の工程を把握できるようになります。
内部トレーサビリティ
内部トレーサビリティとは、特定の事業所および工程に限定したモノの流れを追跡できるようにすることです。具体的には、自社での生産・加工のプロセスおよび出荷先の特定までを指します。各工程における作業内容や、製品の情報が紐付けることで、品質が向上するだけではなく業務の見直しに活用するという使い方もできます。
トレーサビリティ管理が必要な理由
トレーサビリティが必要な理由は、管理体制が確立できていない場合、以下のような問題が起こりかねないためです。
- トラブル対応が遅れる
- 経済的損失が生じる
- 信用を損なう
トラブル対応が遅れる
物流工程が特定できないと、トラブルが発生した際の対応が遅れる可能性が高いでしょう。原因を究明している間にも、被害はどんどん広がり続け、消費者の安全が脅かされ続けるおそれがあります。
経済的損失が生じる
原因を突き止めないことには、どの工程に問題があったのかわかりません。そのため、流通している全製品の回収・廃棄が必要なうえ、生産を一時ストップせざるをえないことから、トラブル対応にかかる経済的損失は甚大です。
信用を損なう
製造工程にトラブルが発生した場合、取引先や消費者の不信感を煽ることになるため、信頼性の低下は避けられないリスクだといえます。さらに、どの工程に原因があるのかわからず問題への対応が著しく遅れると、顧客からの信用を失うことになるでしょう。
トレーサビリティシステム導入のメリット
トレーサビリティシステムを導入する大きなメリットとして、下記4点が挙げられます。
- リスク管理の強化
- 顧客満足度の向上
- 信頼感の醸成
リスク管理の強化
識別情報・記号を印字しておけば、トラブル発生時の原因究明が容易です。問題の原因がすみやかに把握できれば、当該製品の回収作業がスムーズに行えます。トラブル対応にかかる費用および生産停止期間も、最小限に抑えられるでしょう。
顧客満足度の向上
トレーサビリティシステムでは、顧客情報を付与することも可能です。蓄積された情報・履歴は、データとして活かせるため、さらに満足度の高いサービスを提供できるようになります。
信頼感の醸成
トレーサビリティによってリスク管理の方法を明らかにすることは、取引先にとっても有益な仕組みだといえます。手に取った商品のルーツがたどれるようになれば、安心して購入できるためです。トレーサビリティを確立することで、安心・安全な製品を提供する企業というイメージの定着が図れるでしょう。
トレーサビリティを機能させるためのポイント
トレーサビリティは、次の3点を確保してはじめて適切に機能するようになります。
- 各サプライヤーとの協力関係
- 情報の一元化
- 正確かつ鮮明にマーキングできる印字方式
関係者との協力関係
トレーサビリティシステムには、全工程における供給元や利害関係者との連携が必要です。考え方や認識にズレがあると、トレーサビリティがうまく機能しなくなるため、協力体制の構築が欠かせません。また、トレーサビリティ管理の負担が大きくなりすぎないよう、各現場に適した範囲で導入するほうがよいでしょう。
情報の一元化
各工程で情報管理がバラバラだと、認識の相違が生まれ、トレーサビリティの利点を活かせないおそれがあります。例えば、製造現場では業務効率化を重視した情報管理が行われるのに対し、消費者に近い工程だとリスクヘッジに重きが置かれがちです。ブロックチェーン技術などを用いて情報を一元管理し、物流の全工程において有益なシステムを確立することが大切だといえます。
手軽かつ正確にマーキングできる印字方式
操作が難しく、印字不良やミスが多発する印字方式では、トレーサビリティが機能しません。あらゆる素材に印字できて手入れも簡単なスタンプなら、初期導入がしやすく、生産ラインでのマーキングに関するトラブルも抑えて運用できるでしょう。
トレーサビリティは鮮明な印字があってこそ!
製品に対する安心・安全が重視される現代において、トレーサビリティの徹底は重要な課題となっていくでしょう。そして、トレーサビリティは、正確かつ鮮明な印字が大前提です。
シヤチハタは、スタンプインキ技術による産業マーキングの効率化・リスクマネジメントに役立つよう、技術開発を進めています。マーキングやインキに関するご相談を受け付けていますので、トレーサビリティを支える印字方式をお探しの方はぜひお問い合わせください。